また内田樹氏の変な記事を読まされたので、簡単に事実誤認を訂正しておく。


まず今回のNHKの事件が「モラルハザード」だというのは誤りである。これはウィキペディアに書かれている通り、「プリンシパル・エージェント関係において、エージェントの行動について、プリンシパルが知りえない情報があることから、エージェントの行動に歪みが生じ、効率的な資源配分が妨げられる現象」をさす。つまり契約の一方の当事者が、隠れて相手の利益に反する行動をとることであり、市場にプリンシパルはいないので、今回の事件はモラルハザードではない。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo


上掲の、池田信夫氏が内田樹氏を批判した記事について、変な感じの騒ぎになっている。
池田氏の指摘はもっともであろうけれど、ちと暴言が過ぎると思う。
仮に用語の使い方に誤用や誤解があったとしても、「ああ、これをこう間違えているのね」という事を踏まえながら読みすすめていけば良いだけである。いちいち批判しながら読むという事も態度としては「あり」だけれど(というより必要だけれど)、内田氏の旨味は知見のひけらかしにはないので、それは勿体無い。この点は重要である。
今回の批判にしても、ある面での内田氏の無知さが露呈されたというだけの話であって、記事の中身(論理)自体が死んでしまうということにはならない。
「いやいやそんなのは強引に開き直っているだけだ」という話はあるだろうけれど、それでも構わないという事をウチダの読者(ウチダ流にいえば倍音を聴いている人たち)は解っている。


それにしても、一冊も著書を読んでいないのに
内田氏の本は読んだことがないので、本業の水準はどうなのか知りませんが、ブログの記事を読んだだけでも、彼の本で「現代思想」を勉強するのはおすすめできませんね。」という池田氏の発言はやはりいきすぎだと思えてならない。
ま、実はきちんとした「現代思想」の本は数としてはあまり書いていなかったりもするのだが。
ちなみに、内田擁護のコメントも内田批判のコメントもどちらも池田氏流に言うならば「イナゴ」であることに、当の本人達は気づいていない。


内田氏はこの件について静観している。
それが正解だと彼は知っている。
こういう「常識」を解っている人だから私は内田樹ファンなのだ。